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「住まいのプロ夫婦」が実践した家づくりとは?
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奥様 ぜんぜん聞いてなかったんですけど、この対談のお話。
桐谷 は?
奥様 「は?」じゃなかろうもん! 何も考えてないですよ。
桐谷 別に考えんでも・・・
奥様 考えるくさ!
桐谷 すいませんね。
奥様 「すいません」じゃなかろうもん!
桐谷 まあ、お手柔らかにお願いします(笑)。えー、なれそめを申しますと、以前僕が勤めていた建築関係の会社で、僕が先輩で嫁が後輩だったんです。僕が設計を教えてたんですよね。
奥様 もう、8 年、9 年位前ですね。
桐谷 僕からビシバシ鍛えられて(笑)。
僕は、仕事は厳しいんで(笑)。
奥様 (苦笑)。何で結婚したんでしょうね(笑)。
桐谷 しかも職場結婚(笑)。だから一応、夫婦2 人とも建築関係の世界にいたわけですね。
奥様 一応ですね。
桐谷 そんな夫婦の家づくりは一体どうだったのか? というお話しができればと思います。
奥様 私は聞いてなかったんですけどね(笑)。
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桐谷 結婚当初は、アパートに住んでいました。ホームラボには、結婚後、しばらく経ってから入社しました。
入社した当時は「家を建てよう」とはまだ考えてなかったですね。その後、お義父さん、お義母さんに甘えさせて頂いて、嫁の実家に同居させてもらいまして。
奥様 その間にお金を貯めまして。
桐谷 2、3 年ぐらい同居してましたけど、やっぱり、育ってきた環境が違うでしょ。実際に僕もよその家庭に入って生活してみて、その家族その家族でぜんぜん違うなっちゅうのは感じましたし。生活習慣とか価値観がぜんぜん違うんですよね。
奥様 細かく言えば、食事の味付けも違うしね。
桐谷 そういう意味では、僕自身もいい経験したんですけど、なかなか同居する機会もないでしょうから、家づくりを進める中で「どういう家を作りたい」とか「どういう家族の生活を想像するのか」っていうのは、たぶん夫婦で多少なりとも違ってくると思うんですよ。
だから、こういう仕事に携わる者としては、同居は勉強になったかなあ、と。それがなかったら、建てた家のカタチもちょっと違ってた気がします。
奥様 家づくりでご主人と奥さんの意見が違うって、あるとやろうか?
桐谷 けっこうあるよね。男と女の違いっていうのもあるでしょうし、育ってきた環境が違うからですね。子どもの育て方ひとつでも考え方が違ったりしますから。
奥様 なるほどねー。
桐谷 子どもとどういうふうに接していくかっていうのは、夫婦それぞれでイメージとしてあると思うんですよ。それぞれの育ってきた家庭で、親子の関係ってぜんぜん違うもんですよね。だから、同居して嫁がご両親と接するのを見て、「こういうふうな親子関係というのが、嫁がイメージしている家族のかたちなのかな」っていうのは感じましたね。
奥様 ほー。
桐谷 同居を経験することによって、「こんな家庭をイメージしてるんだろうな」っていうのが分かったというか。基本的に、子育てとかしつけ、子どもの教育っていうのは、嫁さんが主体になるからですね。そういう意味では良かったのかなと。
奥様 私も、なるべく夫の実家に子どもたちを連れて行くようにしてます。
桐谷 僕が土日に休めないんで、そこらへんは非常に感謝してるんですけど。僕が男だからしょうがないかもしれないんですけど、あんまり実家に干渉しないですからね。
帰ってもあんまり会話がないからですね(笑)。
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桐谷 実家にお世話になって、そこでお金が貯まってきて、「家を建てようか」って話になってきたよね。
奥様 そうよね。
桐谷 土地から探したんですけど、最初は嫁の実家の近辺で探してたんですが、「これ」っていう場所がなかったんです。で、あれこれ探して、この場所にいきついて。
奥様 うちの実家と、夫の実家と、ちょうど中間地点だったしですね。
桐谷 そんなに利便性がいいところではないですけど、2 人で実際に現地に来てみて、ここでの生活のイメージができたんです。現地に来るまでは「どうやろか?」って言ってましたが、実際にその場に立ってみると、インスピレーションみたいな、交通の利便性とかそういうところだけじゃない、なんか「パッとひきあうもの」があったんですよね。
奥様 「本能」ですかね。
桐谷 僕も結構お客様にお話しするんですけど、いろんな条件が良くても、「何かあんまり好きになれない」とか「あんまりよく感じられない」と思ったら、やっぱりそこを選ばない方がいいと思うんです。逆に多少条件が悪くても、意外とその場所に行ってみると「ここでいいかな」と思えたりそこに立った時に自分たちが家を建てた後の生活がイメージができるような場所の方がいいんじゃないかと。
奥様 まさしく自分たちがそんな感じだったんですよね。
桐谷 結局、自分から下の世代も含めて、その場所に根づくわけです。だから、ある意味ちょっと本能的な話ですけど、「そこに惹かれるかどうか」が大事なんだと思います。やっぱり実際に「見て回ること」が大事ですからね。インターネットとかで「情報」だけを見てると、土地はなかなか分からない気がしますね。実際に足を運んである程度の数を見ていくと、何が良いか悪いか、だんだんと分かってくるはずです。
奥様 あと、「夜」は確認しておいた方がいいですよね。とくに女の子がいるご家庭だったら、防犯的なものとかもありますし。
桐谷 昼と夜では、同じ場所でも雰囲気がガラッと変わりますからね。
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桐谷 土地も大事ですが、通常は「どこで建てるか」というのが最も大きな選択になるんでしょうが。
奥様 主人がホームラボですからね。迷いようがないですよね(笑)。
桐谷 普通のお客様だったら、「どこの住宅会社にしようか」とか「どんなプランにしようか」とか、そこにいちばん時間がかかるんでしょうが、我々の場合それがなかったからですね。
間取りのプランを決めるのも早かったですし。プラン自体は10 分か15 分ぐらいでできちゃったんですよね。設計的な考え方っていうのは、お互いに共有してたんで、間取り自体はとくにもめることもなく。
奥様 もめるもなにも、自分でさっさと考えとったもんね。
私にきっちりプレゼンしてくれるかと思ってましたけど(笑)。
桐谷 プレゼンも何もないですよ。鉛筆でピュッて書いて、「ハイこんな感じ」って(笑)。一応、業界の夫婦なんで「あ・うん」の呼吸があってですね。
奥様 あったっけ?
桐谷 なかったっけ?
奥様 お風呂とか洗面とか、水まわりを2 階にまとめましたけど、そこらへんもとくに抵抗なかったですね。
桐谷 1 階って、玄関があってリビング・ダイニングがあって、そして水まわりがあってってなると、結構それぞれのスペースが狭くなりがちなんですよね。
とくに、うちみたいな総2 階建てだと、逆に2 階のスペースが余り気味になるんです。だから、水まわりを2 階にもっていったら、ちょうど良くなるんですよね。
子どもたちのためにも、1 階のリビングは無駄に広い方が良かったりするんです。
奥様 走り回ってうるさいけどね。
桐谷 子どもは走り回るもんですからね。まあ、子どもと過ごせる時間は、短いもんですよ。
奥様 あっという間に成長しちゃうんでしょうねー。
桐谷 うん(しみじみ)。
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桐谷 お互い学生の頃から建築を勉強して来てるわけですから建築関係の友だちが多いんですよ。だから、「家を建てる」ってなると「どういう家を建てるんだろう」っていう、友人たちからの妙なプレッシャーがあるわけです(笑)。
奥様 ははははは(笑)。
桐谷 やっぱし、「普通の家」は、ちょっと建てれんのですよ(笑)。
奥様 たくさん見に来たよね。
桐谷 棟上の時とか友だちみんな来てくれて、「どんな家が建つんだろう」って興味津々な顔なわけですよ(笑)。僕は、どちらかというと学生の時からRC の鉄筋コンクリート建築の方に興味があって、就職する時も設計事務所に行こうか住宅会社に行こうか、結構迷ったんですよ。だから「RC の家を建てたいな」っていうのが僕の中にずっとあって、自宅も木造なんですけど、外見がRC 風のモルタル仕上げにしたんです。
奥様 コルビュジエ(※注:ル・コルビュジエ(1887-1965)。
スイス生まれで主にフランスで活躍した建築家。フランク・ロイド・ライト、ミース・ファン・デル・ローエと並び近代建築の三大巨匠とされる)とか好きやったとやろ?
桐谷 そうね。コンクリートの建築でも、コンクリートがだんだん古ぼけていって黒ずんでいくでしょ。風化していって表面がざらざらになったり、藻がついたりとかするでしょ。そういうのが好きなんですよ。昔のRC の建物の感じが。だから、うちの家も早く汚れてくれんかなっていう(笑)。古くなっていっても、ただ単に汚れていくということじゃなくて、味が出てくる感じが好きなんです。
奥様 もともと設計を志したのは、なんでやったと?
桐谷 うちの親父も左官をやってまして、同じ建築の方に自然に進んでいったというか。親父が家を建てた時、中学校1 年生位だったんですけど、いちばん影響を受けたのはその時の経験ですかね。住宅会社の人が打ち合わせとかしてるのを見て、「カッコいいな」と思って。で、親父が「一級建築士になったら図面一枚書いた結構なお金をもらわるっぞ」って言ってて、「それはいいね!」って(笑)。
もちろん、現実的にはそんなことなかったんですけどね(笑)。
奥様 「自宅」というよりは、「建築作品」みたいな感じだったわけですか?
桐谷 自分の家は、「住宅」と言うよりは「建築」として捉えたかったっていうのはありますね。ただ、住宅地の中に建てたから、ちょっと異彩を放ってる感じはありますけどね(笑)。とくに外観ですよね。北側は完全なウォールで、どこが玄関か分からない、みたいな。そこが狙いだったんですけど。
奥様 北側からの景色がいいんですけどね。窓がないから見えません。
桐谷 外に出れば、景色は見えますけどね(笑)。この家を名付けるとすれば、「ウォールファサードのシンプルボックス」ですね。
ウォールが完全に門構えになっちゃってるんで。子どもたちは「屋根がないからいや」って言いますけども(笑)。
奥様 私も友だちから「え、ここ!?」って言われましたもんね(笑)。「窓ないと!?」って(笑)。
桐谷 「建築」というか「デザイン」的なことでいうと、中心にコンテンポラリー的なもの、万人受けするかたちってものがありますよね。その中心から表現が尖っていくと、人によって好き嫌いが激しくなっていくからですね。デザイン的にとんがった家っていうのも、僕もいろいろ提案してきましたけど、やっぱりチャレンジ的な要素が強いから、結局は万人受けするカタチに収れんしていくんじゃないかなと思うんです。例えば個人の設計事務所とかだと、その事務所の個性的なデザインを選んでくれる人で成り立つんでしょうけど、やっぱり住宅会社っていうのは、とんがり過ぎちゃってお客様を選び過ぎてもいけないんでですね。
奥様 ほどよいデザインが大事なんでしょうね。
桐谷 そこはどの住宅会社の設計担当の方もそうなんでしょうけどぶちあたる壁じゃないんでしょうかね。その壁を乗り越えて、質の高いデザインをやりきれたりしていくと、またお客様の層が広がっていくというか、そういったことは感じますね。
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奥様 建築デザインとしての「作品性」と「居住性」の両立で、葛藤とかあったんでしょうかね?
私は知らんけど。
桐谷 確かに「作品性」も考えましたけど、かといって「居住性」は損なわれてないからですね。まあ、プランで言えば、玄関の横に勝手にスタジオ
(※防音設備があり、桐谷の趣味のピアノやキーボードなどを演奏できる部屋)を作っちゃったことで、夫婦間で大問題が起きましたけども(笑)。
奥様 あれは無駄ですよね!プランには「洋室」って書いてあったんですけど。「何でここに洋室!?」って怪しかったんですよねー。
桐谷 「スタジオ」って書くわけないですよね(笑)。まあ、「洋室」とか書いといたわけです(笑)。
奥様 実は、あのスタジオのせいで水まわりが2 階になったんじゃないかと。
桐谷 「防音」はすごいですよ。
奥様 それは余計な出費です。
桐谷 うん。
奥様 「うん」じゃなかろうもん!
桐谷 ただ、最近は「趣味の部屋」というか、そういったお部屋を作られるお客様が多いですよね。例えば、本棚がガラガラと開くようになってて、その奥にご主人の隠れ部屋があるとか(笑)。ストレスの多い時代ですし、そんな影響もあるのかなと思います。
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桐谷 あなたも、キッチンにはこだわりましたよね?
奥様 このキッチン、かっこよくないですか!?
「見た目」で選んだだけなんですけどね。家具っぽくてキッチンに見えないところがいいな、と。
リビング・ダイニングが広くてキッチンも目立つんで、あんまり「キッチンらしく」したくなかったんですよ。
桐谷 このキッチンも結構いいお値段なんですけど(笑)、ご主人的には「嫁さん孝行」じゃないですけど、少々キッチンが高くついても、奥さんのご満足のいくものをお選びになる方が増えてますよね。
広く開放的なリビング・ダイニング空間が今の設計のトレンドですから、キッチンも「見せる場所」になってくるんです。だから、どんなデザインのキッチンにするかでリビングの雰囲気も変わってきますからね。
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桐谷 あとうちではダイニングテーブルを置いてないんです。
大きい座卓を置いて床に座る生活を主体にすると、比較的空間を広く使えますからね。
奥様 うちの実家では、ダイニングテーブルでご飯食べよったけどね。
桐谷 晩酌もダイニングテーブルでしてたんですけど、ちょっとですね、僕には合わんな、と(笑)。
やっぱり、床に座ってゆっくり飲みたいじゃないですか。
あとですね、子どもたちにご飯の配膳とか片づけをなるだけ手伝わせるようにしてるんですけど、高さが低い座卓だと、小ちゃい子どもたちでも手伝わせやすいんです。これも、しつけのひとつじゃないですけど、ね。
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桐谷 実際に住んでみて、もう1 年経つけど、どうですかね?
奥様 あったかいよね。
桐谷 確かにあったかい。高気密・高断熱の住宅性能ですね。
奥様 さすが、ホームラボ。
桐谷 ありがとうございます。うちの場合は、ちょっと実験的な床暖房なんですけどね。床の温度というのは、人間の住環境の快適さの中では結構重要なところなんですよ。
足裏からもろに熱を奪われていくんで。
奥様 家の中があったかいから、玄関出たら寒くてびっくりしますよね。家の中と外でぜんぜん違うから、出て行く前に窓を開けて外気温を確認したりします。夏もエアコンいらずで。
桐谷 夏は、家の南側にすだれを下げて、窓を開け風を呼び込んで過ごしてます。だから、エアコンなしでいけちゃいます。
寝る時だけ寝室のエアコンつけて寝ますね。
それでも真夏日の前後1 週間ぐらいですか、エアコンつけるのは。
寝る前の1~2 時間程度、風がない時だけですね。
奥様 夏は、外出してて家に帰ってくると、ひんやりするんですよね。
桐谷 断熱性能が高いんでですね、内外の温度差がはっきり出るんですよね。実際にうちで建てたお客様って、エアコンをつけてないお客様が結構多いんですよ。僕も一応、断熱の計算とかやってるんで、数字上の理屈ではすごいと思ってたんですけど、いざ自分で生活してみると「やっぱすごいなあ」と実感しますね。
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桐谷 僕らは実際にいろんな住まいを提案してきて、何百棟も住宅の建築に携わってきました。そのプロとしての経験値があるんでプロの目線で提案ができますけど、実際に「住まい手」として家を建てたことはそれまでなかったわけです。実際に自分で家を建てて、そこに住んでみると、また違うものが見えてきますよね。この世界でプロとしてやってきて、それなりに自負してる部分もあったんですが、意外と見落としてることもあるなーって思いました。
奥様 自腹ですからね。
桐谷 家づくりに関して、改めていろいろ感じる機会になったんですけど、いちばん大きいのは、建ててもらった大工さんや職人さんに「住まい手として感謝する」っていう気持ちが分かったことです。これまでは、お客様のために家を建てる側で、大工さんや職人さんには「作り手側として感謝する」という気持ちだったんですが、自分の家を建ててもらって、「やってもらって良かったなー」と実際に作って頂いた方に感謝する気持ちが実感できましたよね。
奥様 ほんと、ありがとうございました。
桐谷 担当してもらった大工さんや職人さんはもちろん、実際のお客様の気持ちとしては、いちばん接する機会の多い住宅会社の担当営業だったり、設計だったり、現場監督だったり、そういった人に対しての思いっていうのは、ほんと大きいのかなと思います。
だから、そんな仕事に自分が実際に携わっているわけですから、お客様から感謝して頂くためにも、ほんとに真摯に仕事をしていかんといかんなあっていうふうに感じましたね。
そういったことを感じられたことが、ちょっと大きかったかなーっていう。なかなか経験できることじゃないからですね。
ホームラボでは、有り難いことにお客様から差し入れを頂く機会が多くて、それだけ感謝して頂いている証拠だと思うんです。そういったお客様のお気持ちが、自分が家を建てる立場になってみてよく分かるなーって。
奥様 はい。家は一生に一回ですからね。感謝もあるだろうし、建てる前には期待も不安もあるだろうし。
桐谷 そう。お客様は期待と不安と同時に抱えていると思うんですけどもそういうお客様の「思い」を、もっと感じていかないといけないと思います。
奥様 あなたの場合、全部自分で設計して、自分の会社で建てたわけですから、ちょっとまた違うんでしょうけど。
桐谷 まあ、不安もないし、逆に変な期待もないですよね(笑)。
全て自分でやってるんで。僕はこの会社でずっとやってるんで、もちろん内部も分かってますし、間違った仕事をしないっていうのも分かってますけど、普通のお客様はそうじゃないわけでしょう。
期待もあれば、「大丈夫かな」っていう気持ちもどっかにお持ちなわけでしょうから。
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桐谷 逆に不満とかないとかね?
奥様 水回りが2 階にあるのは、洗濯物を外に干す時にちょっとめんどくさいですけど、部屋の中でも乾くのは乾きますからね。室内干しの時はラクですね。
桐谷 断熱性能が高いからね。
逆に冬場は乾燥しちゃうから、室内の加湿をするっていうのが重要になってきますね。断熱性が高いと内外温度差が出るでしょう。
空気中の水蒸気は変わらないわけだから、温度が上がっていくと相対湿度は下がっていくわけです。
そうした時には、加湿をしてやらないとダメなんです。
よく「窓が結露しないからいい家だ」って言われますけど、確かに家の性能は高いってことなんですが、小ちゃい子どもがいるお宅はウィルス対策も考慮して、ある程度は加湿して乾燥しないようにしておかないといけないですね。
「湿気の度合い」は、人間がいちばん感じにくい感覚ですから、湿度計とかで40%以下にならない様に湿度管理しないといけません。
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奥様 うち、ドアが少ないよね。余分なドアがなくて変に仕切ってないから、それがいいかな、みたいな。
桐谷 和室もドアがないというか、仕切りを作りませんでしたからね。
奥様 1 階でドアがあるのはトイレぐらいですかね。
これだけの広さがあって仕切りがないと、子どもの行動範囲が広がって、よくまあ走り回りますね。だけど、仕切りがないからぶつからないですよね(笑)。床も天然木で安心ですよね。
桐谷 子どもが小ちゃい頃は、床とかは合板の床材じゃなくて天然の木がいいかな。
奥様 子どもたちは真冬でも靴下履いてないですね。
それはいいです。
桐谷 それから子どもたちがそこらへんでそのままスコーンと寝るから、あっちこっちで寝てるもんね。
奥様 トイレでも寝てたもんね(笑)。
桐谷 寝汗を天然の木の床が吸うから、そこらへんが気持ちいいんでしょう。
奥様 起きたら、床の木目の跡が思いっきり顔についたりしてますけど(笑)。
桐谷 もともと仕切りのない畳の部屋を作ったのは、そこで子どもたちが昼寝してもいいようにと考えてのことだったんですけど、天然木の床のおかげでそこらじゅうで寝るから、和室はあんまり関係なかったかもですね。
天然の木っていうのは、やっぱりすごくいい材料ですね。
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桐谷 ここに引越ししてきて、最初に戸惑ったこととかあったかいな?
奥様 戸惑ったこと? あったかねー?
桐谷 階段に手すりがないんですけど、来た人みんなから「危ないんじゃない」って言われたんですけど、子どもたちもバカじゃないみたいで、ちゃんと壁際を通りますよ。
奥様 意外と危ないことはなかったね。
桐谷 僕の最初の印象は、自分で設計しとってなんですけど、「広いな」って思いましたね(笑)。それまでは嫁のご両親と同居だったから、やっぱり手狭だったんですよね。場所を移動するにも「お義父さん、ちょっと通してください」みたいな(笑)。
この新居に引越してきて、最初はホテルに泊まりに来た感覚やったですね。
奥様 照明も落ち着いた感じになったしね。
桐谷 うちの家はちょっと照明にこだわりまして、店舗照明の照明士さんに計画してもらって、普通の住宅とは光の考え方が違うんです。
住宅のセオリーからいくと、通常は影が出ないように満遍なく照らすようにしていくんですけど、うちは逆に明るいところと暗いところを作って、あえて影が出るように設計してるんです。
蛍光灯じゃなくてダウンライトにして、明るさも結構落として全体的に落ち着いた感じにしました。
奥様 子どもたちが、夜早く寝るようになったね。
桐谷 照明士さんから聞いたんですけど、夜に蛍光灯であかあかとした明かりをあまりにも点けてると、色温度が高いせいで脳がなかなか休まらないらしいです。うちは、子どもたちはだいたい9 時頃に寝かしつけてますけど、すぐにこてんと寝ます。
僕もこてんと寝ますけど(笑)。
奥様 昼間に家の中を走り回ってるせいもあるんでしょうけどね。
桐谷 夜、仕事から帰って来て、明かりが少し暗めだから、落ち着くのは落ち着きますね。明かりは身体のバイオリズムにも関係してくるという話もあるようです。
奥様 お客さんは、明かりにこだわられたりするんじゃない?
桐谷 そうね。今はどっちかっていうと、明かりの質よりも節電に関心が多くて、LED 照明とかそこらへんの関心は高くはなってきてますけどね。
これからは、照明そのものの考え方も変わっていく気もしますけど。
少し暗めにしといて、フットライトで補うとか、そういうふうになっていくような気がするかな、個人的には。
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桐谷 建築の勉強をしてた時に、自分で家を持つときのイメージってなかったと?
奥様 私? そりゃあ、いっぱいあったけどー。
実は「和」が好きだったからですね。瓦の家が。昔の日本家屋とかそういう家はいいなあっていう感じはしてたんですけどね。
桐谷 今、「瓦の家」ってだいぶ少ないもんね。
奥様 少ないねー。
桐谷 僕がこの世界に入ったのは20 年前ですけど、その時はほとんど瓦やったですもんね。瓦も三州とか淡路とか粘度瓦とか、瓦の「質」まで問われてましたからね。昔はセメント瓦とかも結構あったし。
奥様 あった! あった!
桐谷 今はホームラボでも使ってますけど、グラスファイバーシングルっていって、アメリカ製のやつですけど、飛ばなくて割れるやつです。
奥様 「瓦」っていいよね。
桐谷 「和風の平屋」って、うちの家と真逆やけどね。
奥様 実家もぜんぜん違うんやけどね(笑)。
和風の平屋って、どんどん見なくなってきたけん、「さみしいなー」って思ってたんですよね。もともと神社とかお寺とか好きだったんですよね(笑)。宮大工さんとか大好きで。
それで設計の方に進んだっていうのもあるんですけど(笑)。
桐谷 木造軸組工法とか。
奥様 そうそうそうそう! ステキ!
もー、棟梁とか左官とか大好き!
桐谷 うちの親父は左官やけども。弟子入りするかいな?
昔に較べて職人さんとかでも女性の方が増えてきましたもんね。女性の大工さんも増えてきてますし。女性の方が几帳面で手先も器用ですからね。本来そうあるべきかもっていう気もしますけどね。
奥様 今から修業か・・・うーん。
桐谷 昔は瓦も全部手上げですよね。
クレーンとかないから、近所の人が来て手伝ったりしよったもんね。
奥様 すごーい!
桐谷 僕も昔は現場監督から始めたんで、手習いの時は、クレーンとか入らない所は結構あったんで、いつも手上げで大変だったですよ(笑)。
次の日、ほんと肩が上がらなくなりますもんね。
奥様 へえーっ! 若干見直した。
桐谷 今は棟上の前日には足場を組むんですけど、昔は足場とか組んでなかったけんね。
奥様 はー! すごい!
桐谷 昔の大工さんは、先行足場とか「邪魔やー」って言いよったですけど(笑)、今は足場なかったら怖くてできませんよね。
そう考えたら、家づくりもほんと変わっていってますよね。
自分がこの世界に入った20 年ぐらい前と較べたら、ぜんぜん違いますもんね。
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桐谷 やっぱり、子どもたちやろうね。
奥様 子どもたちねー(笑)。
桐谷 うちはとくに仲がいいからですね。
帰って来て、子どもたちがキャッキャキャッキャ仲良くやってるのを見るのが、まあ、あれですね。
奥様 幸せですか。
桐谷 それが何年続くか分かんないですけど。
何のかんの言っても、嫁もそうでしょうけど、子どもたちのために生活してるっていう、そのウェイトが結構大きいからですね。仕事してるのも、まあしんどい時もありますけど、子どもたちのためにがんばってるっちゅうのが大きいですよね。
子どもたちが楽しくやってると「幸せかな」って思える感じですかね。
奥様 そうねー・・・大変ですけどね。男性は外で働いていいですけどね。でも、うちは親が働いてたからですね・・・やっぱり子どもの頃って、親が家にいないとさみしかったからですね。
嫌ですよね、親が家にいないって。
桐谷 だから、今後もよろしくお願いします。
奥様 はいはい。でも今回の対談は聞いとらんかったけどね。
桐谷 ・・・(笑)。